> NEWS > 事業再構築指針の...
NEWS新着情報
先日「事業再構築とはなんぞや?」を具体的に定義した事業再構築指針及び手引きが公開されました。
この指針に沿ったものでなければそもそも申請が出来ません。
この指針、かなり難解な内容になっていますが、できるだけ理解がしやすいよう、ポイントをまとめてみました。
この記事は代表の川原拓馬が執筆しました。
事業再構築指針を理解する必要性
事業再構築指針は、この補助金へのチャレンジを検討されている事業者にとって非常に重要なものです。
まず、事業再構築指針に則っていることが、この補助金の申請要件になっていますので、指針を理解しなければ、通る通らないの前に、申請が可能かどうかが分からない、ということになります。
また、この指針は、制度設計者が事業再構築に求めることが反映されたものになっています。
「指針との合致度」については当然ながら審査項目に入ってくると思われますので、採択される上でも非常に重要な内容となります。
さらに、この指針自体が「ポストコロナのための事業再構築」を検討するための、すばらしい思考フレームワークになっています。
「なんだよ、厳しい要件を定めて。もっとバラまけばいいのに。」というような意見も耳にしますが、これは非常にもったいないことです。
私は、この指針は(分かりにくいものの)素晴らしい内容ではないかと思っています。
補助金に採択されるためというだけではなく「どうやったらこの指針に当てはまる取り組みになるんだろう」と考えながら自社の取り組みを見直してみることで、より本質的な事業転換に取り組む契機となり、ひいてはポストコロナでのビジネス飛躍のためのきっかけをつかむ。
そのような経済のアクセルになりうる内容ではないでしょうか。
ぜひ、前向きにとらえる気概をもって事業計画策定に取り組みたいところです。
そもそも事業再構築補助金とは
指針の説明に入る前に、そもそも事業再構築補助金とはどういうものであったかを簡単におさらいをしておきます。
この補助金は、「コロナ禍をなんとか生き残ってくださいね。そのためにお金を幅広くばらまきますよ」という性質のものではそもそもありません。
コロナ禍によって世界が大きく変わってしまい、コロナ前の世界にはもう戻らないと言われています。
そのような中で、”思い切った”事業再転換をしてポストコロナの変化に対応してビジネスを飛躍させようとする事業者を力強く応援しようとするものです。
したがって、幅広く資金を行き渡らせようというものではなく、上記の趣旨に合致した取り組みを行って果敢なビジネス転換に取り組む企業を”選別して”支援しようという趣旨のものです。
この辺りは菅総理の経済思想を踏まえるとよく理解できます。
(過去の記事で触れておりますのでご興味ある方はご覧ください>>)
事業再構築指針は申請要件の一つ
今回発表された事業再構築指針は、主要申請要件3つのうちの1つです。
従って、あくまで「これを満たしていないと申請できないよ」という最低条件であり、満たしているからといって採択されるとは限りません。
ただし、趣旨そのものに関わるものですので、「合致の度合い」は審査においても重要な観点になるでしょう。
事業再構築に求められることは「新規性×経営へのインパクト」
では何をもって事業再構築とみなされるのでしょうか?
それが事業再構築指針にて示されているわけですが、正直言って非常に難解です。
事業再構築の類型がいくつか示されているので「自分はどこかに当てはまるのか?」と、どうしても最初からそちらに目が行きがちですが、そちらをいきなり見るとドツボにはまります。
類型は複数ありますが、単にパターンの違いです。
事業再構築の考え方自体は基本的にどの類型でも同じですので、まずはその考え方を押さえましょう。
事業再構築で求められることは「新規性×経営インパクト」です。
これらのうち、どちらかが欠けても事業再構築であるとはみなされません。
新規性があっても、経営へのインパクトが弱ければダメ。
経営へのインパクトがある取り組みであっても、新規性がなければダメです。
そしてそれぞれが、恐らく大方の予想よりも高い程度での両立を求める内容となっていると言えます。
それでは、新規性・経営インパクト、それぞれについて見ていきます。
新規性には多角化が必要
新規性とは何をもって言うのでしょうか。
それは製品の新規性×市場の新規性です。
つまり、「今までと違う製品と、今までと違うお客さんに売る」取り組みであるということです。
これは古典的なフレームワークである、アンゾフの成長マトリクスでいうところの多角化ですね。
つまり、製品が新しいだけでもダメ、市場(お客さん)が新しいだけでもダメ、ということです。
余談のようで重要な話ですが、昔、中小企業診断士の資格を勉強していた時には(合格しましたが更新が面倒くさくて今は失効しています)
「多角化は一番リスクが大きいので基本的に避けるべきである」
と習いました。
そのようなハイリスクの取り組みに果敢に取り組む企業を応援しようということなのでしょう。
しかしながら、果敢と言えば聞こえは良いですが、コロナ禍で財務体質が悪化している事業者にとって、さらなるリスクを取るべきかどうかは考えどころです。
かの孫氏も『不敗』の重要性を説いています。
補助金がもらいたいからといって、過度なリスクをとることは本末転倒であり、避けるべきです。
冒頭述べたことと矛盾するようですが、リスクとリターンのバランスをいかにとって行くのかは経営の重要なキモではないでしょうか。
果敢にチャレンジするだけでもダメ、守っているだけでもダメ。
本補助金の事業計画でも求められているように、市場調査や実現性の検証を綿密に行った上で、意思決定をしましょう。
経営インパクトの大きさは大きく2種類
さて次に、経営へのインパクトの考え方ですが、これは類型によって少し異なります。
まだ分かりにくいですね。
つまり「主たるビジネスを変えるかどうか」で考え方が変わります。
ざっくり言うと、
主たるビジネスを変える場合 ⇒ 変えたあとのビジネスが、社内での売上高構成比で最大になること
主たるビジネスを変えない場合 ⇒ 新しい取り組みに該当する売上高が全社の10%以上になること
ということです。
まずはこの程度の理解をしていただけると良いかと思います。
事業再構築の類型
自社の取り組みが事業再構築の類型のどれに当たるのかは、ざっくり以下で判断します。
今の主たるビジネスを残したまま、新規事業を興すというパターンが「新分野展開」。
今の主たるビジネスそのものを変えてしまうというのが「事業転換」「業種転換」。2つの違いは、転換の振り幅です。振り幅の大きさは日本標準産業分類のどの階層レベルの転換にあたるかどうかで判断します。
新規事業やビジネスそのものの転換ではないけれど、製造方法や提供方法を変えるというのが「業態転換」です。
いかがでしたでしょうか?
実際にはさらに詳細な定義があります。
まずはこの内容を理解した上で、指針や手引きを読み込んでいただければと思います。
少しでもご理解の一助になれば幸いです。