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今年に入ってから事業再構築補助金のご相談やご依頼を数多く受け、4月末の第一回締切に複数社の申請を行いました。
補助額は中小企業の通常枠で最大6000万円、補助率2/3と金額が大きいぶん、申請書に記載する項目も多く、これまでの補助金事業と比べて労力がかかりましたが、その中でどのように書いたら相手(審査員)に伝わり、採択してもらえるのか、私なりに得たノウハウを解説します。
この記事はライターの藤田美佐子が執筆しました。
略歴:(株)リクルート新潟支社で求人広告のディレクター、ブライダル雑誌の編集を経験。
2006年に京都に移住して以来、フリーランスのライターとして観光、食、求人、医療、ブライダルなど幅広い分野で取材・執筆活動を行う。
補助金事業の指標に合ったストーリーを描く
まずは、それぞれの補助金事業の指標や必要要件を読み込み、理解することが大切です。
いくら取り組みが素晴らしいものであっても、指標に合致しなければ採択されず、支援を受けることができないからです。
例えば、事業再構築補助金は「企業の思い切った事業再構築を支援」とあるように新分野展開、業態転換、事業・業種展開による規模拡大に挑戦する企業に支援する事業。
「製品や市場の新規性」と「経営のインパクトの大きさ」がポイントになり、日本経済の構造転換を促すような事業計画が求められます。新規事業が今までにない革新的なものか。
さらに、その事業を成功させる体制が整い、実現することにより事業拡大や地域経済の発展に繋がっていくのか。
事業内容や自社の強み、事業計画といった項目について、指標と合っているかを精査して、国という投資家にプレゼンする気持ちでストーリーを組み立てていきましょう。
会社のイメージを持ってもらう
どの補助金事業の申請書にも会社の沿革や事業内容、自社の強みを記入する欄があります。
文章を書くことが苦手だからと「設立/○○年、事業内容/金属加工部品製造、従業員数/○名、○○年に工場増設…」といった箇条書きでは、会社のイメージが伝わりません。
どのような経歴を持った創業者が、どんな想いで独立をしたのか。
何を大切にしながらお客様に付加価値を提供し、ゆくゆくはどのようなビジョンを描いているのか。
「想い」を伝えることが、人となりや会社の特徴への深い理解に繋がり、人の心を動かす。そんな申請書が審査員の印象に残っていくと思います。
小学生でもわかる言葉を使う
審査員の方々は、業界に精通した人ではないため、専門的なことはよくわかりません。
生活に身近なスーパーや、よく利用する食品のメーカーであればいいのですが、完成品ではない部品や生産装置をつくるメーカーの場合、具体的な事業や製品のイメージがしづらく、専門用語を羅列した申請書は、理解することも難しい可能性があります。
「言いたいことを伝える」のではなく、「相手に伝わる文章」を意識してみる。
例えば、「パソコンやスマホに内蔵される重要な精密部品」というように小学生でも理解できる言葉を使い、写真を添えることで理解度がアップします。
自社の強みや優位性を伝えるポイント
■客観的根拠を具体的に書く
自社の強みは「長年の技術力と実績により、お客様から厚い信頼を得ています」と書くだけでなく、「技術力」「実績」「信頼」の根拠は何かを考えてみましょう。
一番わかりやすいのは、「○年連続増収増益」「○○県における業界売上げシェア1位」などの数字です。
また、「業界初」「○○賞受賞」といった事実を伝え、自社が実現できる理由を併記すれば納得感が増すでしょう。
技術力に関しても「高精度を実現」よりも「公差○ミクロンの精度にも対応」と書き、実現できる理由として最新設備の保有台数、有資格者やベテラン技術者の人数を明記。
信頼は「創業以来、○年間も取引継続」「国内有数の大手企業からも相談を受ける」「営業しなくても紹介で新規顧客が増えている」など、これまでの事業を振り返り、事実を積み重ねていくことをおすすめします。
また、食品業界の場合は「地元の新鮮食材を使い、おいしい商品(料理)を提供している」よりも「一般的に業界では原価率30%のところ、当社は原価率50%に設定して高品質の食材を使っている」と言われた方が、おいしくて顧客の評価が高いだろうとイメージが湧きます。
「なぜ、なぜ」と深堀りして、その根拠を明記していきましょう。
■意欲的な社風を伝える
数字的根拠を書けばいいのですが、「うちは業界トップではないし、具体的な数字は出せない」という企業がほとんどではないでしょうか。
そんなときは、社風を伝えることもひとつの方法です。
社長は常にアンテナを広く張り、全国各地や海外の展示会に足を運び、取引先からも最新情報を収集。
新しい技術や機械・工具を積極的に導入して試作を行い、社員の提案も聞き入れるのでチャレンジする風土が根づいている…。
そんな企業なら「補助金を出したい」と思ってもらえるかもしれません。
■お客様の声を伝える
これまで私は、補助金申請支援を通じて、誠実な対応で顧客から厚い信頼を得ている企業に出会い、経営者の方からこのようなエピソードを聞きました。
「高精度や短納期など、他社が断るような無理難題に応えてくれるとよく相談を受けます。そのチャレンジが当社の技術力に繋がっています」
「これは必ず受注したいという気合いの入った仕事の依頼をよく受けます。その信頼に応えるため、社内のメンバーが一丸となり、失敗しても最後まで諦めずに取り組みます」
このようなお客様の声は信頼の証。積極的に申請書に書くべきです。
■転機になった出来事を伝える
長く会社を経営するなか、事業拡大の転機になった出来事はありませんでしたか。
地元の中堅企業から初めて製品の依頼を受けたとき、その製品を手がけた実績はなくても「やらせていただきます」と新しいことにチャレンジ。
試行錯誤を繰り返し、何とか納品した製品が高く評価されて継続的に仕事をいただけるようになった。
このような成功体験はもちろんのこと、主要取引先の工場撤退により、新規営業を進めてピンチをチャンスに変えた出来事もアピールポイントになります。
事業計画の立案のポイント
特に事業再構築で苦労したのは、「事業の新規性」を見出すことです。
今までにない新しい製品や業態が思いつけばいいのですが、短期間で事業計画をまとめられるほど簡単なものではありません。新しい製品が決まったものの、品質や価格、納期において同業他社との差別化が難しく、行き詰まってしまうことも。そんなときは、あらためて事業計画を俯瞰して新しい可能性や方向性について考えてみましょう。
例えば・・・
○自社単独ではなく、地域の企業や自治体、同業他社と連携することで製品・サービスのラインナップを広げて付加価値を高め、地域の活性化に繋げる。
○新製品立ち上げだけでなく、IT技術を活用した販売方法やサービスを含めて、これまでにない新事業を考える。
○BtoBからBtoC、国内から海外など市場を変えたり、広げることで事業の革新性や可能性を高める。
事業計画を立てる際には、業界を問わずに世の中の動きにアンテナを張り、社内のメンバーや取引先ともディスカッションを重ね、視野を広げることが大切です。
周りの意見を否定せず、どうやったら実現できるかを考えてみる。
柔軟なアタマで、楽しみながら事業計画を形にしていくことが、よりよい計画に繋がると思います。
私自身、お客様と一緒に事業計画を考えながら、ディスカッションをすることがとても好きです。
何度も打ち合わせをし、当初とはまったく異なる事業になることも少なくありません。
そうやってブラッシュアップした事業が採択を受け、企業や地域の発展に貢献できたときが何よりも嬉しい瞬間です。