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こんにちは、川原です。
この記事のタイトルでは、「ざっくり」「誰でもできる」「実践的」という言葉をあえて使っています。
この記事は以下のような方にお勧めです。
- 〇財務分析の細かいところは置いておいて財務分析の全体像をつかみたいという方
- 〇財務分析をお勉強だけでなく実際の会社経営に活用していきたいという方
- 〇ビジネスマンとして財務分析を身につけたいという方
つまり、細かいことは置いておいて、財務分析を活用するイメージを持っていただけるようになる、ということがゴールになります。
※この記事の内容を動画にしています。リンクはページ下部にあります。

なぜ財務を理解する必要があるのか
そもそもなぜ財務を理解しないといけないのでしょうか。
また、財務とは何なのでしょうか。
まず、大事なことは財務とは「結果」であるということです。
イメージしやすいよう、あなたが受験生だとして考えてみましょう。
あなたはどこか入りたい大学があるはずです。
そしてそのために勉強をして学校や塾でテストを受けますよね?
財務が分からないということは、何ら経営の結果が分からない、
つまりテストの答え合わせをしないということと同義になります。
志望校に合格するために自分の実力が足りているのか足りてないのかも分からない。
どこを間違っているのかも分からない。
こういった状況で勉強をしているのと同じです。
非常に非効率ですよね?
財務諸表というのは、企業経営の成績表のようなものです。
財務の見方が分からないということは、成績表を見ないというのと同じです。
テストを受けて、答え合わせをしない、成績表も見ない、間違えたところの復習をしない、こういう受験生が受かるわけがありません。
これと同じことですから、財務を見れない経営者が、経営能力が高いはずがありませんね。
結果だけでなく原因を考察する
しかしながら、財務分析のプロである銀行員に対して、時には「結果を見て悪いところしか言わない」「経営を知らない評論家のようなものだ」という批判を耳にすることもあります。
なぜ財務のプロであっても、時に銀行員がこのような批判にさらされるのかというと、結果しか見てないからです。
一方で、優れた銀行員の方は、財務を切り口にして、ビジネス上の課題を驚くほどに的確に突いてきます。
そして財務を切り口に仮説を持って現場を見ることで、より立体的に企業を理解しようとします。
結果には必ず原因があります。

原因には大きく、外部要因と内部要因があります。
外部要因としては、例えば、業種によっては新型コロナウイルス感染症の影響が甚大であったはずです。
内部要因としては、実際に企業が行った行動やプロセスなどがあります。
これらの原因を結果とあわせてセットで見なければ意味がありません。
結果を見て良かった悪かった、と言ってるだけの評論家になってしまいます。
実務家としては必ず「その原因は何だったのか」「何を改善していけばいいのか」「何がまずかったのか」ということをしっかりと考えていかないといけません。
原因と結果を行ったり来たりする
そこで、実践的に活用するためには、財務を使って重要課題を絞ることが有効です。
例えば学校のテストであれば、算数が弱いのか国語が弱いのか。
さらにもっと絞っていけば、算数の中でも文章題が理解できてないのか、あるいは計算間違いが多いのか。
このように課題を絞り込んでいく。そうすれば、どこを重点的に手をいればいいのかがわかってきます。
そしてまた、事実としての結果から原因を考察したり検証する。
なんとなくの感覚だけでやっていては精度の高い打ち手は打てません。
「どこに問題があるのか」「何か改善したとすればそれはしっかり効果が出たのか」
例えば「売上が落ちてしまった」「利益率が低いままだ」などの財務的課題があることがわかれば、その原因としてどの辺に問題があるだろうという当たりをつけます。
例えば売上が落ちているのであれば、マーケティングが悪いのか、商品開発がうまくいっていないのか、あるいは営業組織が弱いのか。
財務は大まかな数字ですので、財務分析だけでは原因の特定まではできません。
ただし、どこに原因がありそうかという当たりはつけられます。
このように活用することで、財務分析は経営改善の非常に有効なツールとなります。
企業活動とは何か
財務分析を行うに先立ち「企業活動とは何か」を押さえておくことが重要です。
なぜかというと、いきなり「○○指標が〇%だからどうだ」というような数字から始めてしまうと、結果だけを見て良い悪いと言うだけの分析になってしまうからです。
ですので、まずは財務分析と結び付けるべく企業活動を押さえておくようにしましょう。
企業活動とは
・お金を調達する
・運用する
・利益をあげる
・内部留保を増やす
・内部留保が新たな資金源となる(資金調達)
このサイクルを繰り返しながら、事業活動を、継続・発展させていく一連の活動のことを言います。

イメージしやすいように例を用いて考えましょう。
あなたがサラリーマンを退職されてそのまま退職金を元手に何かビジネスをするとしましょう。
例えば工場を作ってパソコンを作る会社を起こすことにしましょう。
まず最初に行わなくてはならないことは「お金を調達する」ということです。
ビジネスを起こすにはお金がかかりますので、まずはお金を準備しないといけないわけです。
これを「資金調達」と言います。
この時、お金の調達方法は大きく二種類あります。
まず一つ目はあなた自身のお金です。
あなたがそのまま株主となる場合、これが会社の「資本金」となります。
もう一つが他人のお金、これが「負債」ですね。
この二種類の調達方法を組み合わせて、ビジネスをするための資金を調達するわけです。
そして続いて、その調達したお金を使い、ビジネスを行うための資産を用意します。
これを「運用」と言います。
運用をもう少し具体的に説明すると、ビジネスに使うための資産を買ったりしてくるということです。
例えば、工場を建てることであったり、パソコンを作るための部品を買ってくるといった行為です。
そして続いて、資産を使って商売を行い、売上・利益をあげます。
例えば作ったパソコンを販売するとすれば、販売した売上高とかかった費用の差額が利益となります。
ここでめでたく利益をあげることができた場合は、内部留保が増えるということになります。
内部留保というと少し難しい表現のような気がしますが、「稼いだ利益をプールすることによって、返さなくても良い調達原資を確保できる、つまり自己資本が増える」と理解していただければまずはOKです。
そして自己資本が増えれば、これは「資金調達」になりますから、運用できる資産が増えます。
そうするともっと大きなビジネスを行うことができるようになり、売上も利益もさらに大きくできます。
そうするとさらに内部留保が増えて資金調達ができ・・・・と、良いサイクルがまわりながら、サイクル自体が大きくなっていくことになります。
この状態を「会社経営がうまくいっている」状態であると言うわけです。
一方で、このサイクルのどこかで歯車が狂うと全体に影響を及ぼします。
なので、「どこかで歯車が狂っていないか」とつきとめる必要があります。
これが財務分析の大きな目的です。
例えば、費用が想定外にかかってしまって赤字になってしまったとしましょう。
そうすると、内部留保が減ります。
つまり「資金調達」に悪影響を及ぼします。
そしてさらに、「運用」できる資産が減ります。
そうするとまた売上が上がりにくくなる。
ということで、このサイクルが今度は逆に小さくなってしまいます。
このように、企業を分析する際には、どこか一点だけを見て、良し悪しを判断するのではなく、それがこの企業サイクルにどう影響を与えているか、そして今後もどういう影響を与えうる可能性があるか、ということをしっかりと考察していかなければなりません。
この感覚を覚えておいてください。
この感覚を持った上で財務分析に臨むことで、企業を大きな視点で俯瞰的に、立体的に捉えることができるようになります。
ポイントをまとめます。
- 1.企業活動のサイクルを理解する
- 2.良いサイクルを理解する
- 3.良いサイクルと照らし合わせることで、分析対象の企業活動上の課題を見つけられるようにする
財務諸表の全体像をつかむ
それでは、いよいよ、財務諸表の見方です。
とはいえ、先ほどのサイクルそれぞれが財務諸表と対応していますので、先ほどの企業活動の全体像がつかめていれば何も難しいことはありません。
まず、下の図のように、先ほど理解した企業活動サイクルのそれぞれのプロセスを、財務諸表に当てはめます。(超重要!)
例えば「うちの会社の資金調達はどうなってるんかなー?」と思えば、貸借対照表の右側を見る。
「うちの会社は、集めた資金をどういう形で運用してるんだろう?」 と思えば、貸借対照表の左側を見る。
といった具合です。
財務諸表として、まずしっかり理解すべきは、貸借対照表と損益計算書、この2種類です。
キャッシュフロー計算書も含めて財務3表と言われますが、そもそも 貸借対照表と損益計算書 を理解しておかなければキャッシュフロー計算書は理解できませんし、キャッシュフロー計算書はこれらの2表を組み替えて作ったようなものなので、まずはこの2表の理解で十分です。

では続いて、貸借対照表と損益計算書、それぞれについて、企業活動の評価するためにどのように使っていけばいいのかをいきましょう。
貸借対照表はお金の調達と運用
まず、企業がどのようにお金を調達してどのように運用しているのか。
これを知りたい時に見るのが貸借対照表という資料になります。
貸借対照表と言うと、どうしても会計に馴染みのない方は少し苦手意識を持ってしまいますよね。
ところが実際には、小難しいことを一旦置いておいて構造だけ見ると、非常にシンプルな資料になっています。
まず、貸借対照表は右側と左側に分かれていることが特徴です。
そして右側の合計金額と左側の合計金額は必ず一致するようになっています。
右側にはお金の調達をどのようにしているかということが書かれていて、
左側にはお金をどのように運用してるかということが書いている。
極端に言えば、理解すべきはこれだけです。
超シンプルですね。
もう少しだけ詳しく言うと、右側のお金の調達。
これには二種類あって、「自己資本」つまりあなた(株主)自身のお金、
そして「負債」つまり他人のお金なので返さないといけないお金、
この二種類があります。
まずはこれだけ押さえておけばOKです。
そして、右側が調達、左側が運用ですので、その会社がどのようにお金を調達してきてどのように運用しているのかが分かるということです。
まだ難しいように思われるかもしれませんが、会社にとってのお金の調達と運用ですから、なんとなく会社にとって重要な情報が載ってそうだな、って思ってもらえればまずは良いかなと思います。
損益計算書は、一定期間における会社の稼ぐ力を表す
続いては、資産(先ほどの例では工場であったりパソコンの部品でしたね)を運用するのはいいけど、ちゃんと利益あげられてるんですか、というのを見たいですよね。
これを見るのが損益計算書です。
会計期間(通常は一年です)における、売上・費用・利益(売上ではなく正確には収益と言いますが、わかりやすく売上とします)を見ることができます。
売上から費用を引いたものが利益になりますね。
これがプラスになることを黒字、マイナスになることを赤字と言いますね。
そしてこの利益が内部留保となり、資金調達の一部として貸借対照表につながってくるということになるわけです。
(ただし、内部留保、というとなんとなく「持ってるお金」をイメージしてしまいたくなりますが、「内部留保が増えた=現預金が増えた」とは必ずしもなりませんのでその点はご留意ください。利益が出て内部留保が増えても、例えばそれ以上に設備投資をしてお金を払えばお金は増えません)
まとめ:財務分析は企業活動のサイクルと照らし合わせてイメージを持つ
ということで、企業活動のサイクルを回すというのはどういうことなのか、企業活動がどう財務諸表と関係しているのかを理解した上で、損益計算書や貸借対照表を見ていく。
細かいことを置いておいて、その会社がざっくりどういう状況にあるんだろうという答え合わせするということです。
もちろん、実際に本気で会社を評価しようとなれば、いろんな指標を見て良いのか悪いのかとか見ていかないといけないですが、いきなりそこに行ってしまうと却ってわかりにくいんで、まずは財務諸表には何がのってるんですかという全体像をつかんでいただくということがすごく大事になります。
「いま自分は財務諸表のココを見ているけれどもこれは一体、企業のどういう活動を見てるんだろう」ということがある程度イメージができればまずは十分だと思います。
そこから気になるところを「なんでこうなってるんですか?」「なんで去年より悪くなってるんですか?」などと確認していけば良いのです。
ということで、財務分析を実践的に使っていくためのポイントを記事にしてみました。
※動画での解説はこちらから
少しでもお役に立てば幸いです。
それではまた。